アジアビジネスでいま最も注目を集めるベトナム。「礼儀正しく、日本人に似ている」「勤勉」などなど、メディアでもよい意味で取り上げられる例が目立ちます。しかし、ホントのところはどうなんでしょうか?一緒に仕事をしてみるとイロイロな出来事があるのはどこの国でも変わらないのでは??
淀川には、元留学生をはじめ、日本人配偶者を持つベトナム人やベトナム人定住者など、様々なベトナム語通訳者が在籍しています。現場通訳として経験豊富な彼らに、一緒に働いてみなければわからないリアルなベトナム人像を語ってもらいました。
ベトナム人とうまく働くコツは?
―今日は皆さんが常日頃、日本人と働くベトナム人実習生を監理していて気がついた、「ベトナム人との上手な付き合い方」について感じたことを話していただきたいと思います。
淀川ではひとたび技能実習生を入れた会員企業が、続けて受け入れを決める確率が非常に高いのですが、こういったところに共通の秘けつみたいなものはあるのでしょうか?
通訳A イチバンは日本人上司との信頼関係だと思います。教える側の能力を見せると同時に、「教えたい」という気持ちを彼らに伝えることが大切ですね。
―教えたいと言っても、言葉の壁があると思うのですが・・。
通訳A そもそも忙しい製造現場ではそんなに話す時間はありません。でも、実際にやって見せて、やらせてみせて修正するということを繰り返すと、言葉が不十分でも伝わっているものですよ。ものづくりのセンスのある技能実習生が多いですから。
―なるほど、コミュニケーションが大切なんですねえ。「飲みニケーション」でもいいのですか?
通訳B 違いますね。食事会などを行っていてもうまくいかない会社はあります。
通訳C 最近受け入れを始めたI社と言う企業は、朝の仕事前や昼休みでも、日本人がこまめに話しかけてくれているので、非常にうまくいっています。
淀川の技能実習生は田舎出身の素朴な子が多いので、可愛がって、気にかけてくれていると素直に応えてくれるんですね。
―民族的に日本人に近いと言われる所以ですね。しかし、ベトナムに限らず、外国人は一般的に生産性や品質にこだわるという意識が低いと言われています。このあたりはどうですか?
通訳C 理由も説明せずに「もっと生産性をあげろ」と毎日言われ続けてしんどくなってしまう技能実習生はいますね。『なぜ増やさなければいけないか?』をちゃんと教えると同時に、達成するたびにこまめに企業が口に出して褒めることも大切だと思います。
通訳D モチベーション付けは品質管理にも必要ですね。たとえばG社は自社の部品が何の商品にどのように使われているか、ベトナムの技能実習生に写真を見せて説明していました。「うちは大きな会社じゃないけど(航空機の)ボーイング社の部品を作っているんだよ」という風に、なぜ細かな不良も許されないのかを、一生懸命説明教えてくれて・・。技能実習生たちも感動してましたよ。
―なるほど。通訳と一緒に、仕事の「目的」を具体的に教えることが大切なんですね。
手先は器用。あいまいな指示は厳禁
―メディアでは器用な国民性と報じられますが、本当のところはどうですか?
通訳F 現場仕事の能力は確かに高いです。特に溶接は上手いらしく、先日Y社の社長さんから、「日本人が何年たってもできないレベルの仕事を、1年もたたずにマスターする」と褒めていただきました。
中には不器用な技能実習生もいますが、割合としては非常に少ないですね。
通訳D 社長と一緒に作業していて、社長の間違いを指摘する技能実習生もいました。下手な日本語で一生懸命(笑)。でも、遠慮なく指摘するから逆に好かれていましたよ。
―それは微笑ましい(笑)。逆に注意しないといけないことはありますか。
通訳A あいまいな日本語表現は避けたほうがいいですね。
通訳C そうそう。(NOを意味する)「考えておく」とか「検討しておく」という言葉はベトナム人に難しい。実を言うと私たちも通訳に困る時があります(笑)。
通訳G ダメなときは「ダメ」とはっきり言ってほしいですね。変に期待させるとトラブルのもとになります。
―指導する際にしてはいけないことはありますか?頭を叩くことや人前で怒鳴ることはベトナムに限らず、外国人 にはタブーですよね。
通訳D そうですね。ある社長に一度だけ頭を叩かれたことを2年たっても忘れない技能実習生もいましたね(笑)。
通訳C 注意するとき、家族のことに触れることもダメですね。「お前のお母さんの教育が悪い」なんて言うと逆効果です。
―そこは家族を大切にする儒教文化なんですね。今後も現場通訳頑張ってください。ありがとうございました!
ベトナム社会主義共和国概要
戦争の印象が強かったのは過去の話。社会主義に市場経済を取り入れるというドイモイ政策を実施開始して以降、経済は急成長を続けている。
アジアきっての親日国であることや、勤勉な国民性もあいまって日本からの投資件数は増加を続け、日系企業の投資許可件数やODI(政府開発援助)供与金額は上位に位置しています。
儒教の教えが強いためか、教育熱心な国民性で知られており、識字率は90%以上と教育水準が他の発展途上国と比べて高いのが特徴です。
近年高校や大学への進学率も上昇しているほか、ダブルスクールや習い事も盛んという国民性。理工系のレベルが高く、アジア地域の大学対抗ロボットコンテストでは、必ずベトナムの大学が優勝や上位入賞を果たしていることは有名です。
正式名称 |
ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam |
首都 | ハノイ |
公用語 | ベトナム語 |
面積 |
32万9241km2 ※日本の約90%、九州を除いた日本の面積と同じくらい |
人口 |
約9,620万人(2019年4月時点) 平均年齢は30.9歳(日本は約46歳) |
GDP |
一人当たり2,715米ドル(2019年) 成長率年7.0%(2019年) |
進出日系企業 |
企業数:1,848社(2019) |